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2018/07/06
グランツの基本理念『自ら方程式を創る』@

 グランツたけたが完成して、合同新聞の朝刊でも紹介された。713席というコンパクトな廉太郎ホールは音響の素晴らしさで全国区の評価を受けるにちがいない。多目的に使えるキナーレも、そして会議室としても使える個室の楽屋も数多く、ホールの行事がない時でも多くの人が出入りする施設として市民に愛されることが何より大切である。多くの人が楽しみを求めて訪れてくれる総合文化ホール・グランツであってほしい。

 ところで、ホールの規模の妥当性が論じられた時、市外の専門家からは、「大きな興業をしても赤字の出ない規模が必要で、最低1,000席は欲しい」というアドバイスがあった。水没したホールはたしかに1,000席あったが、人口減少と高齢化のことを考えるとそこまでの規模は必要ないであろうということになった。もちろん、その背景には興業のためや興行主が儲かる仕掛けを作るのではなく、あくまでも市民が楽しみ、竹田らしい企画を展開したいからだという理由があった。施設の維持管理費も後世に負担をかけてはならないという思いもあった。

 この選択は正しかったと思う。多くの市民が参加したアンケートや会議の慎重審議が功を奏したということだろう。そして、この選択を支持するような専門家の言葉がある。空間創造研究所の草加叔也さんの言葉である。

 「劇場のニーズそのものがどんどん変化してきています。量的にはもう足りているというのが現状です。そのような中で、まず鍛えるのは地域のインフラだと思っています。インフラとしての鑑賞者が育たないと、地域を育てていくための劇場の意味がありません。(中略)東京の劇団やオーケストラを儲けさせるために施設を作っているのではありません」とストレートに話されている。さらに、「地域を活性化するために文化や芸術の魅力を伝え、それが市民の誇りに思えるような施設をつくること、そして最終的には市民がそこで活動していくための場所となることを目指すべきだと思います」と続く。

 草加さんのまとめはこうである。「最終的な目的はみんなが劇場に行くようになってくれることです。竣工はゴールじゃない。10年後に向かって何をするかが重要です」。

 まったく、草加さんの言われるとおりだと思う。一流の演劇や有名なオーケストラによる音楽を楽しむ、楽しませてあげたいと思うのはだれしも同じ。でも、企画者たちは自分が楽しむ、自分が企画することの喜びに酔いしれるのではなく、市民がどれほど喜んでくれるのか、どれほど興味を持って参加してくれるのかということを最優先に考えることが大切なはずである。有名なオーケストラを呼ぶことができても、観客席がまばらなら本末転倒である。インフラとしての鑑賞者を育てるという作業にじっくりと取り組む努力が求められる。

 由布院で開催されている映画祭や音楽祭のことを考え合わせることも大切だ。あの文化イベントを発案し、育て、継続させているのは市民の力である。中谷健太郎さんや溝口薫平さんら巨匠の力があったからとは言え、映画ではシネマ5を主宰する田井肇さんや、音楽ではチェンバロの名手である小林道夫先生らの参入により全国区の文化イベントとして注目を集め続けている。観客席も市民のみならず、全国からの来訪者が多い。会場となってきたのは老朽化した公民館。経費も市からの補助金は100万円ほど。そのほかはすべて自費で賄われ、運営は市内外からのボランティアが担当している。まさに、ここに『自ら方程式を創る』お手本がある。

 ただ、それは観光地としての湯布院の方程式でもある。本当の意味でインフラとしての鑑賞者を育てるということに直結していると私は思わない。

 一方、私たちが大切にしようとしているのは、文化芸術に育てられることの大切さを意識することである。グランツがあったから、私たちは小さい頃から文化芸術に触れることができた。とても貴重な感動や、かけがえのない思い出を胸に刻むことができた。豊かな心、価値ある人生を歩むことができたのは、グランツがあったおかげだ。そう語ってくれる人々がたくさん生まれてくれること。それこそが竹田市民が誇りとするグランツの本来の姿であろうと思う。

 

↑ 完成した竹田市総合文化ホール「グランツたけた」

 

↑ 市民ボランティアスタッフにホールの説明をする空間創造研究所の草加叔也さん

 

↑ 音の響きにこだわった、全713席のコンパクトな廉太郎ホール

 

【2018/07/06】 グランツの基本理念『自ら方程式を創る』@