○竹田市出席停止制度の運用要綱

平成17年4月1日

教育委員会訓令甲第5号

1 制度運用の基本的な在り方

(1) 制度の趣旨及び意義

出席停止の制度は、本人に対する懲戒という観点からではなく、学校の秩序を維持し、他の児童生徒の教育を受ける権利を保障するという観点から設けられた制度である。また、出席停止制度の運用に当たっては、他の児童生徒の安全や教育を受ける権利を保障すると同時に、出席停止の期間において当該児童生徒に対する学習の支援など教育上必要な措置を講ずることが必要である。

(2) 教育委員会の権限と責任

出席停止の措置は、国民の就学義務ともかかわる重要な措置であることにかんがみ、竹田市教育委員会(以下「教育委員会」という。)の権限と責任において行われるものとされている。特に、今回の法改正では、事前の手続及び出席停止期間中の学習支援等について規定されるなど、制度の運用上、教育委員会が一層適切な役割を果たすことが求められている。もとより、校長は、学校の実態を把握し、その安全管理や教育活動について責任を負う立場にあることから、教育委員会が出席停止制度を運用する際には、校長の意見を十分に尊重することが望ましい。

(3) 事前の指導の在り方

児童生徒の問題行動に対応するためには、日ごろから生徒指導を充実することが、まずもって必要であり、学校が最大限の努力を行っても解決せず、他の児童生徒の教育が妨げられている場合に、出席停止の措置が講じられることになる。このため、特に次のような点に留意して指導に当たることが大切である。

ア 各教科、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間など学校の教育活動全体を通じ、教職員が一致協力して社会性や規範意識など豊かな人間性を育成する指導を徹底すること。その際、ボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動その他の体験活動を効果的に採り入れること。

イ 教職員が児童生徒の悩みや不安を受け止め、カウンセリングマインドを持って接するよう努めること。併せてスクールカウンセラーや心の教室相談員を有効に活用するなど校内の教育相談の充実を図ること。

ウ 問題行動の兆候を見逃さず、適切な対応を行うとともに、問題行動の発生に際しては、教職員が共通理解の下に毅然とした態度で指導に当たること。暴力行為に及ぶ児童生徒に対し、教職員は、正当防衛としての行為をするなどの行為もあり得ること。体罰については、学校教育法(昭和22年法律第26号)第11条により厳に禁止されているものであること。

エ 問題を抱え込むことなく、家庭や地域社会、更には児童相談所や警察などの関係機関との連携を密にすること。実情に応じて、サポートチームなど、地域ぐるみの支援体制を整備して指導に当たること。

オ 深刻な問題行動を起こす児童生徒については、前述の対応や個別の指導・説諭を行うほか、必要と認められる場合は、学校や児童生徒の実態に応じて十分に配慮しつつ、一定期間、校内において他の児童生徒と異なる場所で特別の指導計画を立てて指導すること。更に、児童生徒に対する指導の過程において、家庭との連携を図り、保護者への適切な指導・助言・援助を行うこと。

2 要件について

問題行動を起こす児童生徒がある場合、出席停止の適用の判断については、前述の1(1)に示した出席停止制度の趣旨や意義にかんがみ、多くの児童生徒の安全や、教育を受ける権利を保障する観点を重視しつつ、個々の事例に即して具体的かつ客観的に行われなければならない。

出席停止の適用に当たっては、「性行不良」であること、「他の児童生徒の教育に妨げがある」と認められることの2つが基本な要件となっている。今回の法改正では、法律上の要件を明確化する観点から「1又は2以上を繰り返し行う」ことを例示として規定したものである。

(1) 他の児童生徒に障害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為

(2) 職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為

(3) 施設又は設備を破損する行為

(4) 授業その他の教育活動の実施を妨げる行為

3 事前の手続について

教育委員会が出席停止を命ずる場合、教育委員会規則に基づく慎重な手続の下、出席停止について関係者の理解と協力が得られ、その適切な運用がなされるよう、以下の点に留意すること。

(1) 事前の説明等

学校においては、保護者等の全体に対して、生徒指導に関する基本方針等について説明を行うときなど適切な機会をとらえて、出席停止制度の趣旨に関する説明を行い、適切な理解を促すことが望ましい。なお、深刻な問題行動を起こす児童生徒については、個別の指導記録を作成し、問題行動の事実関係や児童生徒及び保護者に対する指導内容等を事実に即して記載しておくことが必要である。

(2) 意見の聴取

ア 教育委員会が出席停止を講じようとする場合、これを命ずるに先立って、当該保護者の意見を聴取しなければならない。その場合、保護者と直接対面して行い、今後の指導方針などの説明を併せて行うことが望ましい。意見聴取は主として保護者からの弁明を聴くものであって、保護者の同意を得ることまでは必要ないが、保護者の監護の下で指導を行うという性質を踏まえると、保護者の理解と協力が得られるよう努めることが望ましい。また、出席停止を円滑に措置し、指導を効果的なものとする観点等から、当該児童生徒の意見を聴取する機会を設けることに配慮するものとする。

イ 出席停止の適用について適切な判断を下すとともに、事後の指導を円滑に行う観点から、かねてから当該児童生徒に対する指導にかかわってきた関係機関の専門的な職員等の意見を参考とすることも考えられる。

ウ 問題行動の被害者である児童生徒や保護者については、事実関係等を的確に把握するために事情を聴くとともに、事後の対応に関して説明するなど適切に対処することが必要である。

(3) 運用の決定

ア 出席停止の運用の決定は、教育委員会において、問題行動の態様及び学校の実情を踏まえ、校長の判断を尊重しつつ、保護者等からの意見聴取を行った上で行わなければならない。また、他の児童生徒の安全や教育を受ける権利を保障するための制度であることを十分に踏まえ、適時に適用を決定することが必要である。

イ 問題行動を起こす児童生徒に対しての措置としては、出席停止のほか、児童福祉法(昭和22年法律第164号)や少年法(昭和23年法律第168号)に基づく措置等があり、かねてからの関係機関との連携の下、望ましい処遇の在り方を検討する必要がある。

ウ 出席停止を講ずる際には、必要に応じて関係機関への連絡を行うことが必要である。特に問題行動が生命や身体に対する危険をもたらすものである場合、警察の協力を得る等の措置を併せ執ることが必要である。

エ 家庭の監護能力に著しく問題があると認められる場合には、児童相談所に対して通告等を行い、その協力を求めることが適当である。

オ 出席停止の期間は、学校の秩序の回復を第一に考慮し、併せて当該児童生徒の状況、他の児童生徒の心身の安定、保護者の監護等を考慮して、総合的な判断の下に決定する必要がある。なお、出席停止期間中の当該児童生徒の状況によっては、決定の手続に準じて、出席停止を解除することができる。また、期間は個々の事例により異なるものであるが、出席停止が教育を受ける権利にかかわる措置であることから、可能な限り短い期間となるよう配慮する必要がある。

(4) 文書の交付

ア 出席停止を保護者に命ずる際には、理由及び期間を記載した文書を交付しなければならない。命令の伝達は文書の手渡し又は郵送によることとし、口頭のみにより命ずることは認められない。

イ 出席停止を命ずる文書には、理由及び期間のほか、当該児童生徒の名前、学校名、保護者の氏名、命令者である教育委員会名、命令年月日等について記載することが適当である。また、理由の記載に当たっては、根拠となる法律の条項や要件に該当する事実を明示することが必要である。

ウ 出席停止を命ずるに当たっては、教育委員会関係者又は校長や教頭が立ち会い、保護者及び児童生徒を同席させて、出席停止を命じた趣旨や、個別指導計画の内容など今後の指導の方針について説明する等の配慮をすることが望ましい。

(5) 教育委員会の役割と連携

ア 教育委員会は、平素から各学校や児童生徒の実態を十分に把握しておき、問題行動を起こす児童生徒への対応に関して学校への指導・助言・援助を行うとともに出席停止の事前手続に適正を期する必要がある。

イ 学校は、問題行動を起こす児童生徒があるときは、教育委員会に対し学校や児童生徒の状況を随時報告する等連絡体制を十分とり、必要な指示や指導を受けながら、対処する必要がある。

ウ 出席停止の適用を決定する際には、教育委員会において、学校及び関係機関等との連携を図りつつ、出席停止期間中の当該児童生徒に対する個別指導計画を策定することが必要である。

エ 教育委員会は、出席停止の要件に該当する深刻な問題行動を起こす児童生徒があるときには、適時に大分県教育委員会との連携をとりつつ対応することが望ましい。

4 期間中の対応について

教育委員会は、当該児童生徒の出席停止の期間における学習に対する支援その他教育上必要な措置を講ずるものとする。その際、以下の点に留意する必要がある。

(1) 教育委員会及び保護者の責務

ア 教育委員会は、出席停止を措置する場合、自らの責任の下、学校の協力を得つつ当該児童生徒に関する個別指導計画を策定し、出席停止の期間における学校又は学校外における指導体制を整備して、学習への支援など教育上必要な措置を講じ、当該児童生徒の立ち直りに努めることが必要である。その際、当該児童生徒の在籍する学校における取組の充実を図るとともに、関係機関との連携を十分視野に入れて、適切に対処することが大切である。

イ 出席停止期間においては、当該児童生徒に対して保護者が責任を持って指導に当たることが基本であり、出席停止の措置に当たって、教育委員会及び学校が保護者に対して自覚を促し、監護の義務を果たすよう積極的に働きかけることが極めて重要である。

ウ 教育委員会及び学校は、保護者に対して、事前の手続等において、個別指導計画の内容等について十分に説明し、理解と協力を得るよう努めるとともに、必要に応じ、家庭環境の改善を図るため、関係機関の協力を得て指導や援助を行うことが適当である。

エ 家庭の監護に問題がある場合、出席停止期間中、家庭以外の場合において当該児童生徒に対する指導を行うことも考えられる。

(2) 当該児童生徒に対する指導

ア 出席停止の期間においては、当該児童生徒が学校や学級へ円滑に復帰することができるよう、規範意識や社会性、目的意識等を培うこと、学校や学級の一員としての自覚を持たせること、学習面において基礎・基本を補充すること、悩みや葛藤を受け止めて情緒の安定を図ることなどを旨として指導や援助に努めることが必要である。

イ 学校は、学級担任、生徒指導主事等の教員が計画的かつ臨機に家庭への訪問を行い、反省文、日記、読書その他の課題学習をさせる等適切な方法を採ること。

ウ 家庭の監護に問題がある場合などでは、教育委員会が主導性を発揮し、状況に応じて次のような対応をとる。

(ア) 教育委員会及び学校の職員やスクールカウンセラー等のほか、児童相談所、警察、保護司、民生委員、児童委員等の関係機関からなるサポートチームを組織し、児童生徒及び保護者への適切な指導や援助を行うこと。

(イ) 教育センターや少年自然の家等の社会教育施設などの場を活用して、強化の補充指導、自然体験や生活体験などの体験活動、スポーツ活動、教育相談などのプログラムを提供すること。

(ウ) 地域の関係機関や施設、ボランティア等の協力を得て、社会奉仕体験や勤労体験及び職業体験などの体験活動の機会を提供すること。

エ 出席停止期間中、当該児童生徒が深刻な問題行動を引き起こす場合、教育委員会として保護者の意向にも配慮しつつ、児童相談所に対して児童福祉法上の対応について検討を要請することも考えられる。また、非行が予想される場合には、警察等との連携を図り、その未然防止に努めることが必要である。

(3) 他の児童生徒に対する指導

学校においては、他の児童生徒の動揺を鎮め、校内の秩序を回復するとともに、当該児童生徒が再び登校してきた場合に円滑な受入れができるよう、他の児童生徒に対して友情の尊さを理解させ、協力しあって学校や学級の生活を向上させることが必要であることを認識させる等適切な指導を行う必要がある。また、当該児童生徒の問題行動の被害者である児童生徒の心のケアについて配慮することが大切である。

5 出席停止期間後の指導

(1) 学校復帰後の指導

出席停止の期間終了後、学校においては、保護者や関係機関との連携を強めながら、当該児童生徒に対し将来に対する目的意識を持たせるなど、適切な指導を継続していくことが必要である。その際、当該児童生徒や地域の実情に応じて社会奉仕体験や自然体験、勤労体験、職業体験などの体験活動を採り入れていくことが望ましい。なお、出席停止の措置を行った場合における当該児童生徒の指導要録の取扱いについては、次の点に留意して、適切に行うことが必要である。

ア 「出欠の記録」の「出席停止・忌引等の日数」欄に出席停止の期間の日数が含まれ、その他所定の欄(例えば「備考」など)に「出席停止・忌引等の日数」に関する特記事項が記入されることとなる。

イ 「総合所見及び指導上参考となる諸事項」については、その後の指導において特に配慮を要する点があれば記入することとなる。

ウ 対外的に証明書を作成するに当たっては、単に指導要録の記載事項をそのまま転記することは必ずしも適当でないので、証明の目的に応じて、必要な事項を記載するように注意することが必要である。

この訓令は、平成17年4月1日から施行する。

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竹田市出席停止制度の運用要綱

平成17年4月1日 教育委員会訓令甲第5号

(平成17年4月1日施行)

体系情報
第7編 育/第2章 学校教育
沿革情報
平成17年4月1日 教育委員会訓令甲第5号