映画「メモリィズ」坂西監督×主演・柄本佑さんインタビュー
坂西監督と主演・柄本佑さんが語る映画「メモリィズ」
6月12日に全国公開を迎える映画「メモリィズ」。公開を前にした5月30日には、グランツたけたで完成披露舞台挨拶付き上映会が開かれ、監督の坂西未郁さんと主演の柄本佑さんが登壇しました。竹田の日常風景が物語を彩る本作。今回はお二人に、作品に込めた思いや撮影秘話、そして竹田での思い出について語っていただきました。
「記録と記憶の映画」の始まりと、竹田との出会い
お二人にとって、この映画が竹田を初めて訪れるきっかけだったのでしょうか。
坂西監督
この映画の構想を練っていた頃、「記憶」と「記録」をテーマに脚本を書いていたのですが、今は亡き編集者の鈴木歓さんから「阿蘇と久住の野焼きで、この物語を終えるのはどうだろう」という提案をいただいたんです。そこで実際に阿蘇や久住の野焼きを見に訪れたのですが、そのときが初めてです。「まずはこの土地を感じてみよう」と竹田に滞在したことから、この映画づくりは始まりました。
柄本さん
大分だと湯布院は映画祭で小さい時から訪れていたんですが、竹田市を訪れるのは今回の作品がきっかけでしたね。
初めて竹田に足を踏み入れた瞬間の印象をお聞かせください。
坂西監督
僕が初めて踏み入れた時は、先ほどの鈴木歓さんから「後輩が山小屋をやってるからそこに行け」と紹介をしていただいたんです。でも実際に行ってみたら、カフェだったという驚きもありましたが(笑)、何より印象的だったのは、竹田に向かう道中の風景でした。今回の映画にも登場している車窓からの景色や町並みを見た時に「なんか日本ではない感覚があるな」と感じたんです。自分の中にはなかった風景や空気感がそこにはあって、移動中の車の中でもずっとその面白さを感じていましたね。
柄本さん
最初に竹田入りしたのは夜だったので、周りの景色があまり見えなかったこともあったのですが、これから始まる撮影への緊張感とともに町に入ったのを覚えています。
ロケハンでも竹田の様々な場所を巡られたそうですが、最終的に「ここなら撮れる」と思わせた決め手は何だったのでしょうか。
坂西監督
「野焼き」の壮大さは大きなポイントでしたが、それ以上に竹田の町を回る中で、僕なりの「日本の原風景」を強く感じる場所がたくさんあったからです。それも一つだけではなくて、車で5分、10分行ったらまた全然表情を変える温泉街だったり、武家屋敷だったり、それこそ普通の畑だったり、いくつも表情が見えて。これらをパズルのように一つひとつ組み合わせていくことで、 日本人が誰もが持っている「普遍的なふるさとの感覚」や「日々の営み」に近づけるのではないか。そう確信できたことが、竹田市を選ばせていただいた一番の理由です。
圧倒的なスケールと緊張感の中で挑んだ野焼きシーン
物語の中でも重要な役割を担う野焼きのシーンですが、実際に目の前でご覧になって怖さを感じることはなかったですか?
柄本さん
不思議と怖さはなかったですね。というか、怖がっている暇がなかった(笑)。地元の皆さんが自然に野焼きを行っている横で、その時間をお借りしての撮影でしたから。撮影時はなかなか火がつかないこともあり、現場がバタバタとしていましたし、火がついたら数カットの芝居を決めなければならないということもあって頭がいっぱいでした。
――やり直しのきかない一発撮りですね。
柄本さん
そうです。だから割と気が張っていて、「怖い」という感じはなかったですけど、それでもやはりあの音と、パチパチと燃えていく様を生で見られたのは良かったと思いました。間近で見る機会はないですし、「なんかすごいものを見たな」という気がしてます。
野焼きのシーンでは「綺麗」というセリフがありましたよね。その言葉がとても印象的でした。
坂西監督
火の近くまで行った時には恐怖を感じたのですが、遠くから眺めた時には純粋に「綺麗だな」という感覚を持ちました。 生きていく中で、誰かの一言によって物事の見え方が変わる経験は誰にでもあると思うんです。怖いと思っていたものを誰かが「綺麗だ」と言えば、確かにそう見えてくることもある。「笑っていいんだよ」と言われることで気持ちが楽になることもあります。そうした視点の変化や感情の移ろいは、この映画が描こうとしている日々の営みや人との関係性とも重なる部分があると感じました。
心に残る風景と竹田で過ごした時間
本作は竹田の町を歩くシーンも多かったですね。撮影でお二人にとって忘れられない場所はありますか?
柄本さん
映画の中で、右側が坂になっていて、左側が開けている道が出てくるんですが、そこが 特に印象深いです。撮影初日に歩いた場所ということもありますし、最初は牧草があった場所が、時間が経つと刈り取られてなくなっている、そうした景色の移り変わりも含めて、作品全体の像がパッと見えたような気がした場所でした。あとは、伊佐山さんや成田さんとお芝居をした畑の風景も忘れられません。竹田で訪れた場所は、本当にどこも素敵な場所ばかりでした。
坂西監督
「雄太が犬と散歩をしていると、どこからか音楽が聞こえてくる道」のシーンです。あの場所はプロデューサーの方と二人で片ヶ瀬に足を下ろし、歩きながら見つけた道なんです。「こっちに良い道がある気がする」というプロデューサーの直感についていったら、あの素晴らしいロケーションに出会えました。あとは植木道のシーンは撮影が終わって完成した後に、自分がプライベートで撮った写真を見返していたら、ほぼ同じ位置にカメラを据えて撮っていた写真が見つかったんです。無意識のうちに同じ構図に惹かれていたんだなと気付いた時、映画と自分の日常が地続きになっているような不思議な縁を感じました。

カメラの話もありましたが、撮影の合間など、竹田で過ごしたプライベートの思い出や思わず撮ってしまった写真などはありますか?
柄本さん
撮影がお休みの日に、地元の鶏屋さんで食べた「鶏鍋」がびっくりするくらいとても美味しくて! 撮影が終わって東京に戻ってから、お取り寄せをして友人たちにも届けたりしまして(笑)。 それくらい美味しかったですね。あとは地元の秘湯に行ったり、撮影終了後には家族と合流して由布院に移動したりと、短いながらも濃い時間を過ごせました。
竹田という街が、二人の記憶に残したもの
今回の映画撮影は、竹田市民にとっても大きな宝物になりました。お二人にとって、竹田で過ごした時間はどのような記憶として残っているでしょうか。また帰ってきていただけますか?
柄本さん
役者という仕事をしていて、監督の「初めての作品」という記念すべき瞬間に立ち会えるのは、この上なく豊かな感じがあってですね。今回、坂西監督の「初めて」に立ち会えたのはすごいことだと思っていて。その場所が竹田で。監督が揉まれて悩んだりしたところも一緒に過ごしたりしていますし、“青春時間”のようなものが竹田には空気として残っていて、思い出深い場所となっています。あとは鶏屋さんのこともありますから、定期的に来たいなという気持ちはありますね(笑)
坂西監督
イッセー尾形さんが「僕は初めて出演した舞台や映画のことを鮮明に覚えている」って いう話をしてくれたんです。僕は本作が初めてなので、まだその感覚はわからないですが、でも、この先どんな作品を撮ることになっても、どこかで竹田のことを思い出し、関わりながら生きていくんだろうなという気がしています。この映画を通じて竹田とのつながりができたので、気軽に遊びに来たいですし、「今後もよろしくお願いします」という気持ちですね。
おわりに
映画の舞台として選ばれた竹田市は、お二人にとっても特別な記憶が刻まれた場所となったと話してくれました。撮影を通して生まれた竹田とのつながりは、映画の完成をもって終わるものではなく、これからも続いていくのかもしれません。
6月12日に全国公開を迎える「メモリィズ」。スクリーンいっぱいに広がる竹田の豊かな風景とともに、お二人がこの地で感じた空気や時間の流れを、ぜひ映画館で味わってみてください。
5月30日にグランツたけたで行われた上映会
主演の柄本佑さん(左)と坂西監督(右)
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大分県竹田市大字会々1650番地
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更新日:2026年06月05日