市長の部屋

市長挨拶 令和7年竹田市新年互礼会より

岡城
皆様、あけましておめでとうございます。
皆様方におかれましては、輝かしい令和7年をお迎えのこととお喜び申し上げます。
さて、御案内のとおり本年、令和7年は、昭和100年と戦後80年という大きな節目の年です。
また、私たち竹田市民にとりましては、市町合併をし、新竹田市が市制を施行して20周年という記念すべき年でもあります。 
そこで皆様方には、竹田市のこの20年間を少し振り返っていただきたいと思います。
 
今から20年前、財政基盤強化型合併を目指して、1市3町が一緒になり、より強く、大きな竹田市をつくって暮らしていこうと決意いたしました。こうして、人口約2万9千人の自然・温泉・歴史文化が豊かな『名水名湯田園観光都市』が誕生しました。 
あれから20年。今の竹田市は、どうでしょう。
人口を見てみますと、県下の合併した市の中では減少率が最も高く、約1万人も減少してしまいました。
また、財政基盤は強化できたのかと言えば、意図した結果は出ていません。現在、これまでの大型事業の債務返済が重なり、新たな大型事業の実施に大きな制約を受けている財政状況にあります。 
しかし、私たちは決して下を向いてはいません。
そう。私たちには偉大な先人が残してくれた、誇るべき自然・温泉・歴史文化があるからです。この何物にも代えがたい素晴らしい環境、そして、その中で暮らしていける幸せを私たちは持っているのです。
私は、そこで一所懸命に生きる市民を応援していきたいと考え、新しい竹田市づくりを進めています。 
竹田市総合計画

市長就任後、まず私は、県下の自治体で竹田市だけが持っていなかった総合計画の策定に向け、市民の皆様と一緒に取り組みました。
そして、私たちの10年後の将来像を「ひとが輝き未来へつなぐいのち溢れるまち『竹田』」と定め、人口減少に「あらがう」と「合わせる」の観点を持った政策の6本柱を建て、様々な事業を展開していくことによって、市民が活き活きと暮らしていける「いのち溢れるまち」の実現へ確実に歩を進めている次第であります。
もちろん、各種事業もやりっぱなしではなく、事業評価も新たに取り入れ、総合計画をもとに計画的に施策を進めています。 

例えば、3歳未満第1子からの保育料無償化や市立中学校制服統一の購入制度は、子育て世帯の負担軽減を図るもので、保護者の皆様から大変好評をいただいています。また、高齢者の罹患率が高い帯状疱疹のワクチン接種費用一部助成では、当初予算だけでは足りなくなり、補正をして市民の要望にお応えしたところであります。これらの施策は市民の生活を1番に考え、心を寄せて支援したいという思いが現れたもので、同時にきちんと評価しながら進めております。 

一方で、人口減少にあらがい、その減少を緩やかにする施策にも積極的に取り組んできました。

例えば、「暮らし」から「しごと」までを支援する新たな移住施策として、若者や子育て世帯を対象に、社会人インターンシップという手法を取り入れました。これらの移住施策により、移住者数は私が市長に就任してからの3年間と、直前の3年間を比較すると1.5倍となりました。さらに、令和6年度の12月までの速報値では、38世帯、62人が竹田市に移住し、この数は10年前の約3倍となっており、移住された多くの方々が地元の事業所に就職し、地域社会のために汗を流してくださっています。 

また、地域産業の振興施策にも特に力を傾注して取り組んでいます。
まず農業分野ですが、ファーマーズスクールを活用して新規就農者を確保するとともに、農業所得向上のための高収益作物への転換や拡大、高付加価値化に加え、生産体制の高度化にも取り組んでいます。
大蘇ダム
また、大蘇ダムの問題解決に向け取り組むとともに、大谷ダムの浚渫工事にも取り掛かり、地域の皆様が営農に十分な水が行き渡るよう尽力しています。
毎年、年の暮れに、荻柏原土地改良区の皆様が鏡餅を県知事に届けていますが、私は、平成23年末の贈呈式に立ち会ったとき、女性農家の方が語った言葉を忘れることができません。
彼女は、荻で米とトマトを栽培されている方で、若かった時を振り返り、「竹田から荻に嫁に来る時、周りから『荻の農家は大変で』と言われた。そして、来てみたら大変どころではなかった。時間水で夜中に作業をする辛い日々。今、子どもに『帰って来て、農業を継ぎなさい』とはとても言えない。どうか地域の農業に光を与えてください」と、涙を浮かべながら、切々と知事に訴えられました。
その姿を目の当たりにして以来、私はその想いを深く心に刻みこんで、市内のかんがい施設の整備に取り組んでいるところであります。
また、先人から受け継がれた貴重な財産である農業用井路などのかんがい施設を、後世に繋いでいくことも極めて重要です。そのため、現在、市内のこのようなかんがい施設を『世界かんがい施設遺産』に登録してもらおうと挑戦しているところです。
イロイロカタロー

昨年11月に、市内小学校の児童がグランツに集まり、「タケタのイロについてイロイロカタロー」というイベントを開催しました。その際、地域のかんがい施設について学習発表が行われましたが、児童の皆さんが先人に深く感謝し、地域のかんがい施設に誇りを持っていることが強く伝わってきました。子どもたちのこの思いに応えるためにも、登録を実現させ、子どもたちと喜びを分かち合いたいと思っています。 

次に畜産の分野では現在、子牛繁殖農家の皆様は、子牛価格の低迷で大変厳しい状況にあります。しかしながら、昨年10月の県共進会では、農林水産大臣賞、九州農政局長賞、部位賞の3つの特別賞を竹田市からの出品牛が独占、更には全6部門で首席という輝かしい成績を収めるなど、竹田市産の繁殖和牛の能力の高さを示し、「竹田市の畜産ここにあり」と声高らかに宣言してくださいました。「いい牛づくり」にこそ、未来はあります。畜産経営の安定のため、引き続き積極的に支援をしてまいります。

次に、竹田市の発展に欠かせない高速交通ネットワークの整備促進ですが、昨年、「中九州横断道路」の滝室坂道路の開通見通しが令和8年度であると発表されました。また竹田阿蘇道路についても、先般の補正予算でも14億円が確保される等、着実に事業進捗しております。今後も国・県と手を取り合い、一日も早い全線開通に向け事業推進を図るとともに、道づくりがまちづくりになるよう戦略を打ち出していきます。 

豊後竹田駅100周年

観光分野では、昨年10月にJR豊後竹田駅が開業100周年を迎え、今年は玉来駅が100周年です。豊後竹田駅は待合室をリニューアルするとともに、ホームに瀧廉太郎が流れる駅とするなど魅力向上を図っており、駅を利用される方々も増加しております。

廃止した長湯ダムのウェークボード施設は、湖面の上の施設撤去がほぼ終わり、長湯ダムの美しい景観が戻りつつあります。地域の皆様とともに、今後の長湯ダム周辺整備を検討していきたいと考えております。 

また、今年はTOS開局55周年記念として、竹田市が舞台の時代劇『はぐれ鴉』が制作されます。TOSの池辺社長と夢を語り合って2年。見事に結実させていただきました。さらには、映画をつくれば必ず映画賞を受賞する石井裕也監督の愛弟子、坂西未郁さんが初の長編映画『メモリーズ』を制作しますが、その記念すべきデビュー作の舞台も竹田市であります。これらの作品を通じて、竹田市の魅力を積極的に広めていきたいと考えております。 

いずれにしましても、観光は地域が稼ぐためには重要な分野です。ルーティンな発想を改め、インバウンド対策も含めて竹田市を訪れる方々のニーズをしっかり掴み、新しい発想で施策を展開してまいります。 

しかしながら、竹田市が抱える課題には、一朝一夕には片付けられないものも多くあります。例えば、こども診療所の問題です。診療所開設以来、担当の市職員が次々と倒れていく状況を重く受け止め、只今、診療所の在り方を再構築するため、専門的な視点から再点検しているところであります。この間、休診を続けており、市民の皆様には多大なご迷惑をおかけして申し訳ございません。診療所あり方検討委員会からの答申も間もなくいただけるということですから、手元に届きましたら直ちに診療所運営方針を確立し、再開に向けて協議を進めていきたいと考えております。 
中学3年生セミナー
また、学校教育も改革しなければなりません。少子化が著しく進行し、私たちが誇ってきた小規模校教育が、それぞれの学校が極小規模化することで維持できなくなっています。本市では1年間に生まれる子供の数が100人を下回って、もう10年近くなります。令和7年度には100人に満たない世代が市内10校の小学校に入学します。また、中学校でもすべての教科に教諭の配置することを目指し、学校再編を進めています。この学校再編は、十分な義務教育を実施できない現状を改善していこうとするものです。小さな社会と言われてきた学校が極小規模になり、家庭的なものになってしまう傾向も見受けられます。
そこで、義務教育をきちんと実施できるように教育環境を整備していきたいと考えています。もちろん、学校は地域のよりどころと考える方々も多くいます。また、地域を維持していくためには必要な施設だという方もいます。そのお気持ち良くわかります。しかしながら、子どもが減り、学校がなくなっても、地域の人々で互いに手をしっかりつなぎ、豊かな暮らしを実現しようとしている地域もあります。
子育て支援
もう一度、地域の子どもたちが置かれた厳しい環境をご理解いただき、地域のかけがえのない宝者にさらに磨きをかけ、私たちと共に成長していくためにご判断いただきたいと考えております。そして、豊かな可能性を持った子どもたちに一人でも多くの友達をつくってもらい、いろんな他者と一緒に生きる社会を、身をもって学んでいただきたいと願っております。 
終わりに、今年は「乙巳(きのとみ)」の年で、「再生や変化を繰り返しながら柔軟に発展していく年」だと言われます。だからこそ、大切にいなければならない言葉があります。それは「不易流行」です。日本がこれまで経験してきたことない人口減少社会の中で、受け継ぐべきものは残し、伝統を大切にしつつ、変えるべきものは変え、時代に応じて新しいものを築いていくことが重要であります。そして、今、私たちにこれに挑んでいくことができるかどうかが投げかかられているのです。
私は、時代は変わる、私たちなら変えられると確信しています。私たちが心と力を合わせ、それぞれの道でその精進を重ねることで、いのち溢れる竹田となり、皆様の笑顔が輝き合う社会となりますことを心底から念願申し上げ、竹田市新年互礼会式辞といたします。

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竹田市総務課 市長室

〒878-8555
大分県竹田市大字会々1650番地
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